【経済】「理系にリフレ論者はいない」仮説

 理系の人でリフレを唱える論者ってほとんどいないんじゃないかなあ、と仮説を立ててみる。


 先に言うと私は、消費者に無理やりマネーを押し込むリフレ策(例:政府紙幣発行とか無利子国債発行とかで国民にお金を直接給付)には断固反対の立場。制御不能ハイパーインフレになる可能性が少しでもあるような、いわば「ロシアンルーレット」のようなリスクに国民をさらす真似は許せない。マネタリーベース(中央銀行が供給するマネー)を増やしてもマネーストック(金融部門全体が供給するマネー)が増えない以上、もう日銀に打てる手はないと考えたほうがいい。


 なぜ「リフレ論者に理系は少ない」と思ったかというと、リフレ論者は一般に、デフレからハイパーインフレに至るまでの変移を連続的変移としかみなしていないから。だからリフレ論者は「デフレからハイパーインフレに入る前に金融政策でインフレを止め、マイルドインフレへと移行すればいい」と平気でいう。理系の人だったらこの変移は「相転移に近い変化である可能性が高い」とアナロジーを立てるだろう。相転移であれば、デフレとハイパーインフレの間に「マイルドインフレ」などという状態はない。


 デフレからハイパーインフレへの遷移は、相転移のなかでも水→氷のような「エネルギー遷移を伴う第一種の相転移」のアナロジーで説明できると思う。一般に、水を静かな環境で0度以下まで冷やしても、すぐには氷にならない。−数度まで温度が下がった状態で、ある拍子に(振動を与えるなどすると)突然水全体が氷になる。


 経済も同じだ。ある程度マネーを注入しても経済には何の影響も与えないだろうが、「国債が暴落しそう」「日銀は本気で”無責任”になる気だ」といった雰囲気が広がる。これが何かの拍子に(日銀総裁の発言とか、巨大ファンドの円売り浴びせとか)をきっかけに、国債暴落、資本逃避、超円安、といった転移が同時多発的に発生する。


 で、リフレ論者はこうしたハードランディングが「起きない」という根拠をどこに求めるんだろうか?インフレターゲットハイパーインフレが止まるというなら、21世紀になってもジンバブエのようなハイパーインフレが何故起るか説明できない。例えハイパーインフレを止めたとしても、インフレと失業率のトレードオフが発動し、日本は失業者であふれかえるだろう。