画像取り違えは「故意」なのか? 調査報告書を読んでみた

 読みました。研究論文の疑義に関する調査委員会による調査結果に対する不服申立ての審査結果について | 理化学研究所 。仕事が佳境ではあるのですが、たまに違うことに頭を使わないと脳が腐ってしまうので(言い訳)。


 以下、感想についてFacebookに投稿した内容を加筆して、メモとして転載しておきます。


 当初の調査委員長が辞任し、委員長が弁護士の方に代わったためか、調査報告書の口調が前回の最終報告書と一変、攻撃色が強くなっています。ロジックの運び方は、民事裁判で弁護士が提出する準備書面そのもの。いかに相手の言動の矛盾を突き、裁判長に「この人の言葉は信用できない」と思わせるか、プロフェッショナルの技術がこれでもかとつぎ込まれてます。前回の報告書はかなり容赦した内容だったんですねえ。

 
 結論の評価としては、この記事(Wmの憂鬱、隠し球が決めた小保方さんの研究不正確定【日経バイオテクONLINE Vol.2050】:日経バイオテクONLINE Webマスターの憂鬱 Premium)の通り、小保方氏の外形的な研究不正の証拠はほぼ固まった、と評価せざるを得ません。それほどに説得力のある報告書でした。


 ただ画像の取り違えについていえば、明確に「故意」か?と言われると、この報告書だけでは結論が出せないようにも読めました。画像取り違えで報告書が主に証明しているのは、「画像を取り違える可能性が高いと当人が認識できるほどのずさんな管理体制があった」という点、つまり法律用語では「故意」というより「重過失」に近いものです。


 重過失は、民事裁判において故意に近い扱いは受けますが、それでも悪質度では故意の方がはるかに上です。このあたりは、仮に本件が裁判に持ち込まれた際、処分の重さ・軽さについて裁判所の判断に影響を与える可能性があります。


 (その一方、ゲル写真切り貼りについては、今回明らかになったScience査読者コメントの件で、故意がほぼ決定的になってしまったように思います。ただ、ゲル写真の切り貼りは研究の存在を左右する案件ではなく、研究ノートも残っているので、悪質度は相対的に低いです)

 
 いずれにせよ、「無能で十分説明されることに悪意を見出すな」(ハンロンの剃刀)とはよく言ったもので、"悪意"を"無能"に置き換える弁護戦術は、処分の判断に一定の影響が見込めるかもしれません。ただ、自分で「私はユニットリーダーの任に適さない」と自白しているに等しいんですけどね・・・。