【電子産業】シャープが太陽電池パネルで2位に陥落したのは環境省のせい?

 太陽電池パネルの生産量でシャープがドイツのQセルズに抜かれ,2位に転落した。この件で,いくつものメディアが環境省の政策を「陥落の背景だ」と槍玉に挙げている。


 いわく,ドイツではフィード・イン・タリフ(電力の高額買い取り)制度を導入して成功したのに,日本の環境省は導入せず,システム購入時の補助金すら廃止した。これは政策の失敗だ!


 いや,それは違うだろ。シャープがシェアを落としたのは,徹頭徹尾,原料となるシリコンの調達に失敗したからだ。シャープだって元々ドイツで太い販路を持っていたはずで,ドイツ市場でQセルズと立場上劣っていたとは思えない。事実,中国企業であるサンテックは,ドイツ市場の好況を受けて,生産量で3位に浮上した。同社はシリコンが高騰する直前に,シリコン製造メーカーと10年の長期供給契約を結ぶことで,安定した供給体制を確保した。


 もう一つ,国内メーカーが低迷する構造的な要因を挙げるなら,シャープや京セラが太陽電池専業メーカーでないことがある。Qセルズやサンテック,複数の新興台湾メーカーは,いずれも太陽電池専業。このため,太陽電池の需要が急拡大する中で確実にリターンが見込める投資先として,ファンドの資金が大量になだれ込んだ。国内メーカーも,資金獲得競争を勝ち抜くため,あえて分社化する道も有り得るだろう。


 環境省補助金を打ち切ったことは,日本メーカーの海外進出をうながす策としても妥当だったと思う。つまり「いつまでも日本市場に頼らず,ドイツほか海外の市場を見ろ」ということだ。ちょうど,携帯電話機メーカーが「パラダイス鎖国」状態の市場で海外進出のインセンティブが働かなかったのとは対照的な政策である。


 もう一つ,環境省補助金を廃止したことで,日本市場は,国内メーカーに低コスト化競争を促す格好の場になった。世界的にみると,ドイツの補助制度によって「太陽電池バブル」と呼ばれるほどの好況が続き,太陽電池の低コスト化へのインセンティブが低い状態にある。だが,ドイツの手厚い補助制度とて,政権が変われば変更があり得る。そのとき,ファンドの支援を受けて装置を買うだけで価格競争力がないメーカーは,一斉に淘汰されるだろう。