【温暖化】我々は後悔はすまい

 池田信夫氏が,「地球は氷河期になる」という題名のブログ記事を挙げている。IPCC第4次報告書の執筆者の一人,スタンフォード大のスティーヴン・シュナイダー氏が,地球寒冷化を示唆する論文「"Atmospheric Carbon Dioxide and Aerosols: Effects of Large Increases on Global Climate"」を発表,IPCCが大混乱に陥る,というものだ。


 日付はエイプリル・フール。参照された論文の掲載年は1971年。これは池田氏の一流のジョークであり,そして一種の未来予測なのだろう。1970年代に一世を風靡した地球寒冷化説は,その後の理論研究や気温の実測により,事実上否定された。もちろん,「近年の温暖化傾向が人為的な要因である可能性は90%」としたIPCC第4次報告とて,今後は新たな知見が現われることで,容易に結論は引っくり返る。


 実際,人為的に排出されるCO2は本当に温暖化の「主犯」なのか,という議論は,完全に決着がついているとは言いがたい。


 2008年現在,これまで主張されてきた地球温暖化問題への懐疑論は,そのほとんどが否定された。その中で恐らく唯一否定できていないのは「現行のシミュレーションは,雲の量(被覆率)の変動を予測できない」というもの。雲の被覆率が下がれば,大気の平均温度は大きく上昇する。雲は,太陽風が強まると被覆率が減少するとの説があり,これが現在の地球温暖化の主因ではないか,と唱える学者もいる。このほかにも,雲の被覆率を変える要素は数多くあり,被覆率の正確なシミュレーションは未だに実現できていない。


 ただ,こうした議論が活発であることは,「国際政治に最も大きな影響を与える基礎科学」となった気候変動学の妥当性を論じる上で,極めて心強い。批判なき学問ほど信頼が置けないものはないからだ。こうした活発な学説の応酬の上に出来た報告書が「IPCC第4次報告書」であるならば,同報告書の知見を政策決定の拠り所にすることは,現段階で人類にとって最も賢い行為といえるだろう。


 仮に数十年後,「CO2ガスが地球温暖化に与える影響は小さい」との結果が出たとしても,我々はそのことに後悔はすまい。地球温暖化対策が人類にもたらす副次的な影響が,極めて好ましいものだからだ。CDM(クリーン開発メカニズム)などを通じて,先進国から後進国にはODAとは比較にならない莫大な資金が投じられ,先端技術が移転される。それが後進国の自立を促し,後進国の貧困を解決させる一助になる。


 もう一つ,地球温暖化を巡る「空騒ぎ」の結果として,原油に過度に頼らない社会が実現できたとすれば,それは人類の貴重な財産になるだろう。最悪の災禍をもたらす「戦争」の引き金が一つ減るのだから。