【展示会】ダ・ヴィンチとアナログLSIエンジニア

 今日,東京国立博物館で開催中のダ・ヴィンチ展に行ってきた。展示の目玉は初期の名作「受胎告知」である。とはいえ,私にとって受胎告知は二の次だった。知りたかったのはエンジニアとしてのレオナルドであり,アーティストとしての彼に興味はなかった。


 だが,実際に展示を目にすると,彼の側面をエンジニアとアーティストに分けるのがいかに浅薄な考えか,思い知らされた。


 彼は,自然界に潜む法則性を好む。例えば,木の枝の張り方に対称性を見つけたり,人体の手・足・胴体の長さから黄金比を見いだしたりした。そして,その法則性に美しさを感じた。


 そして彼は,その美しさを創作に生かした。それは絵画や彫刻であったり,或いは人力飛行機だったりした。彼は,「法則性」という美に身を捧げたエンジニアであり,アーティストであったのだと思う。


 こうしたレオナルドの創作の在り方は,現代のエンジニアなら誰しも共感を覚えるのではないか。エレクトロニクスの世界では,少々飛躍するが,アナログLSI設計のエンジニアに近い感性を感じる。アナログLSIのエンジニアは総じて,美しく無駄がない回路図を描き出すことに喜びを感じる。そういえばあるアナログ設計の大家は,「アナログ技術はアートであり,クラフトである」と語っていた(http://techon.nikkeibp.co.jp/free/article/20040114/101509/)。