【電子産業】日本の大手機器メーカーはなぜ下請けをいじめるのか

 日本の金型企業の凋落が著しいのは,日本の大手企業の「下請けいじめ」のせいではないか――。そんな記事が「NBOnline」に載っていた(http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070531/126111/)。 


 以前,私も下請けいじめの現状についてブログを書いたことがあったhttp://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20060801/119732/。だが,事態は当時よりさらに悪化しているようだ。


 なぜ日本企業は,欧米企業には見られない下請けいじめに走るのか。その理由の一つに,海外から導入した経営手法――キャッシュフロー経営やEVA(または類似の指標)への盲従があるのではないか,と思い始めている。あくまで仮説の段階だが。


 下請けへの支払いを遅らせれば遅らせるほど,企業のキャッシュフローは潤沢になる。利子などの資本コストを下請けに押しつけることになるので,EVAも好転する。そういう仕組みだ。


 支払いを遅らせることで膨大なキャッシュを確保する仕組みは台湾企業の常套手段であり,台湾企業が持つ膨大な投資力の源泉になっているとされる。だが日本の場合,キャッシュの確保というよりは,こうした経済指標に盲従した戦術を各事業部がたてた結果として,今の下請けいじめが現出しているのでは,と思うのだ。


 キャッシュフローやEVAといった指標を重視することが,即,下請けいじめにつながるわけではない。現に,いちはやくこれらの経済指標を取り入れた欧米企業は,一般に国内の金型企業から「支払いが早い」と評価されている。買掛債務を計上しないなんてセコい手が,キャッシュフロー経営の根幹とはまるでズレていることを知っているからだ。


 実際にこの仮説を検証するには,キャッシュフロー計算書における買掛債務の扱いなど,勉強しなければならないことが多い。もしかすると,私の大いなる勘違いかもしれない。いずれにせよ,「下請けいじめ」の問題は長期的に取り組みたいテーマである。