スパコン演算性能ランキング「TOP500」のビジュアル化で見えてくること

 世界のスパコン演算能力ランキング「TOP500」で、ランキングの統計情報をビジュアル化するTreemapツールをいじるのが大変面白い件。各国政府もオープンデータを標榜するなら、こうした優秀なビジュアル化ツールと連動させてほしいなあ、と切に願うところです。データジャーナリストにとっては母屋を取られる形になりそうですが。


引用元:TOP500 Treemap生成サイト
http://www.top500.org/statistics/treemaps/
(以下、特に断りが無ければ2012年11月発表のTOP500におけるLINPACK演算性能に準じています。)


 まず、国別のスパコン演算性能マップ。



 相変わらず米国の寡占っぷりがすさまじいですねえ。この膨大な計算資源が核物理、バイオ、物性、化学、資源調査にふんだんに使われるとすれば、米国の科学技術力推して知るべし、というところ。米国でスパコンと言えば軍事用途、というイメージがどうしてもありますが、大学や研究所の周囲にあるベンチャー企業が、この膨大な計算資源をタダ同然で使えている、というのも米国の競争力を支えています。


 ちなみに、米国が計算資源の過半を占め、日本、中国、イギリス、ドイツ、フランス、ロシアが上位を争うという構図は、実は10年にわたって大きな変化はありません。中国は、2010年11月にTOP500で一位となった「天河一号A」以前も、スパコン保有ランキングでは常連です。たまに、上位にサウジアラビアイスラエルも入ってきます。



 次に、スパコンを開発したベンダー別演算性能ランキング。



 PowerPCベースの超低消費電力スパコン、BlueGene/Qを擁したIBMがとにかく強い。北米、欧州を中心に世界各地で導入実績があります。


 次点のCrayは、NVIDIAGPUアクセラレータ「K20X」を約1万8000個搭載した「Titan」で、演算能力の過半を稼いでますね。一点集中型です。


 HPは、IBMやCrayのような大規模システムの納入実績は乏しいものの、x86ベースのクラスター機を数で稼いだ印象です。


 Crayと同じく一点集中型なのが、富士通。「K Computer(京)」が演算処理能力の大半を占めています。既に1位の獲得から1年半が経過しましたが、同型機の世界展開、という点では、残念ながらIBMのBlueGene/Qに完敗しています。



 最後に、スパコン保有する組織の属性で分類するセグメント別演算処理能力。



 Reserch(6割)、Academic(2割)といった国費投入型の用途が大半を占め、Industry(産業)保有スパコンは2割弱。つまり、スパコンの需要の大半が国費の支援に依っている実態が見えてきます。もちろんTOP500に登録していない企業保有スパコンも多いとは思いますが。

 
 ちなみにクラウド勢では、Amazon Web Servicesが102位(自社開発、Intel Xeon E5、10G EthernetLinux)、Windows Azureが165位(HP製、Intel Xeon E5、Infiniband、Windows)に入っています。もちろんこれは、実際のクラウド環境の一部を切り出したものと思われます。実際のアマゾンのサーバーは40万台あるという話なので、これをフルに演算に回せば、実行効率の低さを加味しても上位5位以内には入るかもしれません。AmazonGoogleMicrosoftが全保有サーバーでLINPACKベンチに挑戦、といった祭りを一回くらいやってほしいなあと夢想するところです。